2011年6月3日金曜日

「基礎から始める都市地震工学シリーズNo.3」が開催

130周年記念レクチャーシリーズvol.5「基礎から始める都市地震工学シリーズNo.3」の第1回セミナーが6月3日に田町にて開催されました。


これは3年目となる全5回のセミナーシリーズで、対象は行政、民間企業、NPOの防災関係者、学生、および防災に関心のある一般の方々。各分野の専門家が、都市地震工学のそれぞれのテーマについて、分かり易く解説するものです。


講演の面白さもさることながら、テーマが都市と地震ということで、関心も高く、予定時間を超過して活発に質疑応答が行われました。ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。


というわけで、第1回目のセミナーのプログラム面白かったポイントをちょっとご紹介します(参加者個人が理解した範囲のまとめなので悪しからず)。


「災害の行動科学―被害の大きさを左右する人間的要因―」
大野 隆造 (大学院総合理工学研究科人間環境システム専攻/教授)
  • 災害時にパニックに陥ることは実際には少ない。むしろ、災害の当事者は冷静に行動する。だが、「現場はパニックになっている」という報道は目を引くためメディアがそう報道しがち。
  • 災害時には、被災者同士の連帯意識が高まり、「災害ユートピア」とも呼ばれる助け合いの状態が出現することがある。震災に対する日本人の冷静な対応は世界から賞賛を浴びたが、このような行動は決して日本人だけのものではない。
  • 警報を聞いても、実際には人はなかなか避難しない。緊急時にも日常生活の延長線で行動してしまい、緊急時モードになかなかならない。そのために被害が拡大することはよくある。
  • 定期的に災害(台風や大雪、津波など)に見舞われてきた地域には、「災害文化」とも呼べる災害対応の知恵の体系が集積している。それは時として観光資源にもなるような美しい町並みを作ったり、災害に対する感性を培っていたりする。
  • ただ雨露をしのげるだけでは「家」にならない。仮設住宅を造る上でも、そこに住む人のライフスタイルも含めて考え、「我が家としての生活拠点」にならなくてはならない。

「地震の揺れの科学―東日本大震災での揺れはなぜ長かったのか―」
山中 浩明(大学院総合理工学研究科環境理工学創造専攻/教授)
  • 今回の地震の揺れの特徴は、大振幅の揺れが広範囲に長い時間続いたこと。なぜこういう特徴が産まれたのか?
  • まずは崩壊したプレートがとても大きかったこと。応力の解放が3回連動的に起こった。
  • そして、太平洋側に露出した固い岩盤が地震波を良く伝えたこと。逆に、岩盤の上の柔らかい層の上にある日本海側地域は、東北地方でも揺れが大きくなかった。
  • 築館では震度7を観測したが、建物には目立った被害はなかった。同じ震度7でも阪神大震災とは被害程度が違う。なぜか?
  • 今回の地震波のスペクトルを分析すると、周期0.2秒ほどの周期の短い波の割合が多い。加速度は大きくても、周期の短い波は建物へ与える影響が小さい。だから築館の建物は全壊しなかった。阪神大震災では、周期1秒程度の周期の長い波だったので被害が大きかった。
  • 逆に、首都圏に届いた波は周期の長い波だったので、高層ビルを大きく揺らした。
  • 地震の予知は難しいが、ある地震を想定したときに、どのような揺れが起きるのかを予測することはでき、これを「強震動予測」という。これは断層モデル、地殻・マントルのモデル、地盤モデルなどを組み合わせて計算するものだが、常に改良していくものであり、完全ではない。
  • 強震動予測を行う場合も、その予測に対してどう備えるかは地震の科学だけでは答えのでない問題で、経済性や社会的合意が必要になる。

この「基礎から始める都市地震工学シリーズNo.3」は、途中から参加することも可能ですので、ぜひ2回目以降もご注目下さい。なお、第2回は8月3日になります。